『手製本、はじめました。』 第6回:7月の終わりに、耳をすます

2025-07-30

こんにちは。banno.です。
毎日暑い日が続いていますが、みなさんお元気でしょうか。
わたしはこの春から、手製本の仕事を始めました。
毎日、紙や糸や道具と向き合いながら、
少しずつ「本をつくる手」を育てているところです。

今日は、そんな日々のなかで感じた「音」について、
少し書いてみようと思います。

作業中、ふと気がつくと、工房にはいろいろな音が響いています。
紙を折る音、針が糸を通る音、糊を刷毛でのばす音。
静かなようでいて、耳をすませばたくさんの「音たち」が働いています。

そのなかで特に印象的なのが、先輩たちの「音」。
たとえば、紙を整えるとき、綴じ糸を引き締めるとき。
無駄のない、そして洗練された「音」たち。
リズムよく、それはまるで小さな旋律を奏でているようなのです。

一方、わたしの音はまだまだ不安定。
音が大きすぎたり、妙に静かすぎたり、どこかぎこちない。
先輩の作業をそばで見ていると、
「音も、作業の大事なひとつなんだ」と思うようになりました。
うまくできているかどうか、目だけじゃなく、
耳でも確かめているんですね。

そんなふうに意識していると、
時々ですが、自分の作業からも
「あ、今の音はちょっといいかも」と思える瞬間が
生まれるようになってきました。
ほんの一瞬でも、先輩の音と重なったような気がして、
なんだか嬉しくなります。

でも、ようやく慣れてきたかな、と思うころには、
次の作業にうつってしまうことが多いのです。
手と耳がついてきた頃に「はい、ここまで〜」という感じで、
少しもどかしい気持ちになることもあります。

「早く上手になりたい」。
でも、今は焦らず、一つひとつ目の前のことを大切に積み重ねていく時。
音に耳をすませながら、今日も丁寧に本を向き合います。
250729写真①

それではまた、次回の更新でお会いしましょう。
暑さが続きますので、みなさんもどうかご自愛ください。

banno.

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