『手製本、はじめました。』 第6回:7月の終わりに、耳をすます
こんにちは。banno.です。
毎日暑い日が続いていますが、みなさんお元気でしょうか。
わたしはこの春から、手製本の仕事を始めました。
毎日、紙や糸や道具と向き合いながら、
少しずつ「本をつくる手」を育てているところです。
今日は、そんな日々のなかで感じた「音」について、
少し書いてみようと思います。
作業中、ふと気がつくと、工房にはいろいろな音が響いています。
紙を折る音、針が糸を通る音、糊を刷毛でのばす音。
静かなようでいて、耳をすませばたくさんの「音たち」が働いています。
そのなかで特に印象的なのが、先輩たちの「音」。
たとえば、紙を整えるとき、綴じ糸を引き締めるとき。
無駄のない、そして洗練された「音」たち。
リズムよく、それはまるで小さな旋律を奏でているようなのです。
一方、わたしの音はまだまだ不安定。
音が大きすぎたり、妙に静かすぎたり、どこかぎこちない。
先輩の作業をそばで見ていると、
「音も、作業の大事なひとつなんだ」と思うようになりました。
うまくできているかどうか、目だけじゃなく、
耳でも確かめているんですね。
そんなふうに意識していると、
時々ですが、自分の作業からも
「あ、今の音はちょっといいかも」と思える瞬間が
生まれるようになってきました。
ほんの一瞬でも、先輩の音と重なったような気がして、
なんだか嬉しくなります。
でも、ようやく慣れてきたかな、と思うころには、
次の作業にうつってしまうことが多いのです。
手と耳がついてきた頃に「はい、ここまで〜」という感じで、
少しもどかしい気持ちになることもあります。
「早く上手になりたい」。
でも、今は焦らず、一つひとつ目の前のことを大切に積み重ねていく時。
音に耳をすませながら、今日も丁寧に本を向き合います。
それではまた、次回の更新でお会いしましょう。
暑さが続きますので、みなさんもどうかご自愛ください。
banno.